GSデザインユース発足によせて

GSデザインユースの若者達へ

篠原 修

平成8年、都市計画家加藤源さんに誘われて北彩都旭川のプロジェクトに参加した。ややあって駅舎のデザインを担当してくれる建築家を募ることになり、建築家内藤廣さんに加わってもらうことにした。

それ以前から、皇居周辺道路や浦安境川のプロジェクトでコラボレーションデザインは行なっていたのだが、その意識はいまだ薄く、旭川のプロジェクトを通じてその意識が顕在化し始めたのだった。爾来、この意識は日向市駅や油津、堀川運河などのプロジェクトを進めるに従って確信に変り始めた。確信とは、まちづくりのプロジェクトを成功に導くためには、様々な専門家が一同に会して実踐に立ち向うコラボレーションこそが、その本流にならねばならないという確信である。

平成17年、10年余り主催してきた「景観デザイン研究会」を発展的に解散し、内藤廣と語らって「GSデザイン会議」を立ち上げた。「土木村」から本格的なコラボレーションへ向けての、土木、建築、都市計画、ID、歴史などの各村を総合した「まちづくり町への脱皮である。この試みはそれなりの実績を有しているとはいえ、いまだ例外的な流れでしかない。前途は正直の所多難である。何よりも後進の、我々に続く若者たちの登場こそが、その将来の成否を握っている。

この度、「GSデザインユース」が発足を目指すという。心強い限りである。その発展を心から願う。ただ注意して欲しいことは、真のコラボレーションが、一人一人が強固な専門性を持ち、且つ柔軟に異分野の意見に耳を傾けることを始めて成立するという事実である。単に異なった専門家が集るのでは烏合の衆にしかならない。

専門性を高めつつ、志を持って強い個が連帯する、この精神でコラボレーションの流れを、太く豊かなものにして欲しい。

篠原 修

GSユースニュース

内藤 廣

近頃の若者は何を考えているのか分からない、などと言い始めると、それはオジサンの始まりと言われるので、近頃のオジサンたちはこういう言葉を吐かなくなりました。しかし実際は、本当の所はよく分からないのです。これは当然のことだと思います。30年以上も年齢が違えば当たり前のことです。だからはっきりと宣言しておきたいのですが、わたしも若者が考えていること、悩んでいること、感じ取っていることの本当のところはよく分かりません。

しかし、人間社会の本質は、他者を理解しようとするところから始まります。もともと人間という存在は、世代間ばかりでなく個人個人も本当のところを理解し合うことが難しいものなのです。深いところにある本当の所は分からないけれど、それを前提にして理解しようと努力する、それが社会や個人を成り立たせている根っこの所にあります。だから言葉や文学が生まれたのです。

必要なのは、世代間であれ個人個人であれ、理解し得ないことを理解しようとする努力や姿勢です。表層の理解ではありません。より深いところ、背後にあるものを理解しようという努力です。より深く他者を理解しようという努力は、やがて社会への洞察力のある眼差し、異なる文化へ深い理解を持ち得る眼差しへとみなさんを導いていくはずです。景観・都市・建築にまつわるあらゆる計画も、こうした他者を理解しようとする眼差しがなくては成り立たないはずです。あらゆるデザインは、そうした理解を土台にして生まれてくるものです。さまざまな若者が集うGSユースも、お互いの意見をぶつけ合い、お互いにより深いところを理解しようと努力する集団になってほしいと思います。

内藤 廣