GROUNDSCAPE DESIGN WORKSHOP 2015
趣旨


 いま、渋谷の街が変わろうとしている。駅を中心とする大規模な再開発により、商業施設やオフィスが超高層化し、歩行者は高架デッキで空中を移動できるようになる。すべてが完成する2027年には、駅周辺はおおきく様変わりする。
 渋谷は、新宿とも池袋ともちがう、独自のエネルギーをもっている。とりわけその独特な地形が、この街の特性を生みだしている。すり鉢状の地形の底に駅があり、駅から放射状にあまたの街路がのび、そのすきまを街路網が埋めている。坂やほそい抜け道といった微細な地形の変化は、そこに多様な文化が根付くことを許容する。この文化の多様さが、渋谷という街の活気と、それでいてどこか危うげな空気のもとになっている。
 渋谷をおとずれる人の大半は、ハチ公広場で断続的にダムのようにせきとめられて一時的に飽和し、いっきにスクランブル交差点へとあふれだす。そして、それぞれの目的地に向かって速度を落としながら流れていく。街の玄関ともいうべきこの場所の体験によって、人々は渋谷という街の独自性を身体にきざみこむ。この人の流れは、スクランブル交差点がある北西エリアのみに限定されない。宮益坂や桜通り、渋谷川方面にも、街路は傾斜をともなって放射状にのびる。いたるところに多様な個を受けいれる空間が存在し、渋谷という街の包容力を保証している。
 2027年に実現するおおきな変化は、渋谷の包容力にどのような影響を与えるだろうか。再開発という、ともすれば空間の均質化をうながす巨大な力の作用を目前にして、いまわたしたちがとるべきデザインの思想と戦略はなんだろうか。
 巨大な駅ビルは、人の流れをその内側に閉じこめかねないが、むしろ積極的にパブリックスペースを創出し、人の流れを街の広域により染みわたらせるきっかけにすることができないだろうか。いまの渋谷という都市空間の文脈に、あらたなパブリックスペースを組みこむことによって、渋谷という街全体の包容力をさらに高められないだろうか。
 多様な個が共存する、懐のひろい街、渋谷。いまこの街に起きつつある変化を、これまで渋谷が蓄えてきた空間の文脈や価値体系のなかに貪欲にとりこみ、よりゆたかなエネルギーに昇華させたい。
 本ワークショップの目的は、渋谷駅前広場を中心に渋谷駅周辺のパブリックスペース群のデザインを検討し、未来の渋谷の都市空間像を構想することである。
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