参加者諸君へ
マス流動と人間
日本の都市の中で一人栄える東京の中でも、最もホットな盛り場が渋谷であると言ってもよいでしょう。昼夜を問わず人が流動し、2年、3年を待たずに変貌する街、それが渋谷で、これを捉えて空間に落とし込む計画に若者達は苦闘した。それが昨年の発表でよくわかりました。教科書的なヒュウマンスケール論では到底解けない空間が相手です。丹下健三が代々木のオリンピック施設や大阪万博のお祭り広場で考え出した「マス・ヒュウマンスケール」に基づく計画論が参考になるかもしれません。
ただしそれだけでは、社会的弱者を救う事は出来ない。山田洋次が「家族」で描いた大阪万博のシーンは強烈な印象となって残り、今でも脳裏に浮かびます。
渋谷駅周辺の都市再開発は、解体プロセスがほぼ終わり、いよいよ建物を造るプロセスに入りつつあります。オリンピックをまたいで十年近く建設が続きます。このような大変革を通り抜けて、それでも渋谷が若者の街であり文化発信の街でありつづけられるか。それがこれからのおおきなテーマです。考えてみれば、もともとこの街は常に生まれ変わっていくエネルギーが人を引き寄せてきたのです。それが雑居性にあふれたビオトープのような、また、その中に紛れれば身を隠すこともできる多様性に満ちた都市の森のような都市空間を創りだしてきたのです。そんな渋谷の特性を踏まえた上で、新しい未来を想像しながら若者なりの思い切った提案をしてください。わたしも当事者の一人なので、良いアイデアなら現実に生かせるかもしれません。